今年もシルバニア村に、年に一度の星祭りがやって来る。
みんながワクワク待っているなか、ショコラウサギの女の子フレアはお悩み中。祭りの日はお母さんの誕生日なのに、プレゼントをどうするか、ちっとも思いつかない。そのうえ、フレアは祭りのメインイベント“今年の木”を選ぶ責任重大な役に指名される。
果たして、フレアが最後にたどりついた、みんなを幸せにする最高のおくりものとは?
このおはなしは、映画公開記念 入場者プレゼント「ショコラウサギの赤ちゃん-おねむり-」を題材にしたおはなしです。
								いったい何をそんなに一所懸命にみつめているの?
										フレアは生まれたばかりのみつごがさんにん仲良く並んでいるベビーベッドを覗き込みながら、そっと問いかけてみました。
										もちろん、みつごは答えてはくれません。だってまだお話ができないのだから無理もありませんね。
										フレアはみつごが揃ってみつめている先を見てみますが、そこには何もありません。
										「どうしたの、フレア?」
										と、ココがフレアに尋ねます。
										「みつごちゃんたちがいったい何をみつめてるのか気になって」
										「みつめてるって何を?」
										「だからそれがわからないから気になるんじゃない」
										「簡単だよ。こうすればきっとわかる」
										と、ココはベビーベッドの横にしゃがみこんで、みつごたちと目の高さをあわせ、同じ方向を見てみます。
										けれどやっぱり何も見えません。
										「なにを見てるんですか?」
										と、クレムもやってきて、天井の角を見上げます。
										そして「あ」とクレム。
										「なにか見えたの?」
										フレアがきくとクレムは「見えました。お姉ちゃまも、よおく、よおく、見てください」
										言われてフレアとココは天井の角をよおく、よおく、見てみました。すると、なにかちいさな光がひらっとうごいたのが見えます。
										「あれはなんだ?」とココ。
										「わからない。ひらひらふわふわ、なんだろう」
										「あれは妖精です」
										「妖精?」
										と、フレアとココは声を揃えてきき返します。
										「絵本で見た妖精さんもちっちゃくて、ひらひらふわふわしてました。だから妖精さんがみつごちゃんたちにこんにちはって挨拶をしに来たんだと思います」
										フレアもココも、なるほどなるほど、とうなずきますが、その時です。
										ちいさな光がひらひら2階に上がる階段の方へでていきます。
										「あ。どこにいくんだろう?」とココが走り出します。
										「追いかけよう」とフレアがつづきます。
										「静かに!」とクレムがふたりを追いかけます。「妖精さんはとっても怖がりなんですから!」
										言われてココとフレアは走るのをやめて、そおっと静かに妖精さんについて行きます。
										光は2階にあるフレアのお部屋の中をくるっとひと回りすると、つぎはココのお部屋、そしてバスルームを見て回り、1階のお母さんのすわる椅子を横切って、お父さんがパンを焼いているキッチンへと入っていきます。
										「きっとみつごちゃんたちがどんなところで大きくなるのか確かめるんだわ」
										フレアが言うと、お母さんとお父さんが「何の話?」と子どもたちにききます。
										フレアは妖精の国からみつごの様子を見にきたちいさな光のことを話します。お母さんとお父さんは「どれどれ、どこだ」とフレアたちが見上げている光をみつけようと目をこらします。
										「ああ、あれは」
										「うん。もうそんな季節なんだね」
										ふたりが言うのでフレアは「妖精さんのこと知ってるの?」と尋ねます。
										「あれは雪ホタルよ」とお母さん。
										「もうすぐ雪がふるよとおしえてくれるんだ」
										「雪ホタル!」とフレアとココとクレムが声を揃えて驚きます。
										みつごたちはそのちいさなちいさな雪ホタルを一所懸命に見ていたんですね。
										みつごのところに戻ってみると、ベビーベッドの周りにちいさな白いひかりがいくつもふわふわ浮かんでいます。
										みつごは両手を思いっきり伸ばしてキャッキャとその光をつかまえようとしているみたい。
										フレアもココもクレムも同じように手を伸ばすと、光のひとつがフレアの指先にちょこんと乗っかり、フレアは大きな笑顔になりました。
										「あ。見てください!」
										クレムが窓を指さします。
										見ると、この冬はじめての雪がちらちらと降りはじめていました。
おわり