クレヨンのたね
(フローラウサギのふたごちゃん)
フローラウサギのふたごの赤ちゃんルノーとヴィオラはお絵かきが大すき。そんなふたりのたからものはお父さんとお母さんにもらったクレヨンです。
でもさいきん、ふたりにはこまっていることがありました。
それは、すきな色をつかっているうちに、どんどんクレヨンが小さくなってしまうこと。
ある日、ふたりがおにわに出ると、お兄ちゃんのレノンが花だんの手入れをしていました。
「土にうえて大切にそだてると、小さなたねが大きくせいちょうしてお花になるんだよ。ふたりもやってみる?」
たねをまきながら、ルノーとヴィオラは顔を見合わせてにっこり。
レノンの話をきいて、なにかいいことを思いついたようです。
つぎの日、ルノーとヴィオラは小さくなったクレヨンをあつめると、うえきばちにうめて、土をかけはじめました。
「なにをしているの?」
レノンがたずねると、ふたりはうれしそうにいいました。
「たねまき!」
小さくなったクレヨンを、うえきばちで大きくそだてようと考えたのです。
楽しそうにクレヨンに水をかけているふたりを見て、レノンはこまってしまいました。クレヨンがふえるはずはないけれど、こんなに楽しみにしているふたりをがっかりさせるわけにはいきません。
そこでレノンはマーケットでクレヨンのセットをかうと、夜の間にこっそりうえきばちにならべておきました。
つぎの朝、
「ルノー、ヴィオラ、クレヨンがさいているよ。」
レノンの声でうえきばちを見たルノーとヴィオラは、まっすぐならんだクレヨンに、大はしゃぎ。
「わあ!クレヨン、大きくなった!」
うれしそうにお父さんとお母さんに新しいクレヨンを見せているふたり。それを見てレノンもひと安心だったのですが……。
よろこんだふたりは、こんどはおもちゃやおかしを両手いっぱいにかかえてきて、うえきばちにうえようとしています。
(どうしよう。 こんなにたくさん、ふやしてあげられないよ。)
レノンはこまりがおです。
それを見たお父さんは、やさしくわらってたねあかしをしてくれました。
「土でたねがそだつのは、お花だけなんだ。クレヨンはやさしいレノンからのプレゼントだよ。」
お父さんのことばに、ルノーとヴィオラはレノンを見てにっこり。
「おにいちゃん、ありがとう。」
ふたりはクレヨンのおれいに、レノンのすきなお花の絵をたくさんかきました。かべにはると、本当にクレヨンのタネでお花がさいたようになりました。