仲なおりのパン

(ショコラウサギのお父さん)

ショコラウサギのお父さんフレイジャーは、パンをやくのが上手。
今日もおなかをすかせた村の子どもたちがお家の中をのぞいています。
「先生にほめられちゃった!」
「お母さんと自転車のれんしゅうをしていてね……」
子どもたちは、パンをおやつにもらいながら、フレイジャーにいろいろな話を聞いてもらうのが大すきなのです。

ある日、フレイジャーがいつものようにパンをやいていると、学校帰りのペルシャネコの女の子スカイが窓からのぞいていることに気がつきました。
「どうしたんだい?どうぞ、中に入って。」
フレイジャーはスカイを家の中にまねきいれました。
「こんにちは、フレイジャーさん。あのね、実は今日、友だちとけんかをしちゃって。」

スカイはぽつぽつと話しはじめました。
「こんど、植物のかんさつ発表会があるんだけど、いっしょにやる友だちが手伝ってくれないの。」
スカイはお花や葉っぱ、月や星などをかんさつするのが大すきなのです。
フレイジャーはやきあがったばかりのパンをスカイにわたしながら心配そうに聞いていました。

コンコン!その時、玄関のドアをノックする音がしました。
「どちらさんかな?」
ドアをあけると、クマの男の子ピアーズが立っていました。
スカイはハッとして、ソファの後ろにかくれました。
「いっぱい勉強したから、おなかペコペコ。」
ピアーズはため息をつきました。
「それに、スカイとちょっとけんかしちゃったから、元気が出ないんだ。」

フレイジャーはいろいろなパンが入ったカゴの中からひとつをえらんで、ピアーズにわたしました。
「ん?このパンに入ってるおいしいナッツはなに?」
「それはナッツじゃなくて、ヒマワリのタネだよ。」
フレイジャーはビンに入ったヒマワリのタネをシャカシャカと鳴らしました。
「えー?ヒマワリのタネって、食べられるの!?」

「ほかにもたべられるタネがあるのかな?」
ピアーズの言葉を聞いて、かくれていたスカイはいてもたってもいられず、
「かぼちゃのタネも食べられるし、ピアーズがすきなイチゴにもタネが入っているんだよ!」
ソファのかげから、思わずとびだしてしまいました。
「うわあ!」
びっくりしたフレイジャーはヒマワリのタネをひっくりかえし、ピアーズもしりもちをついています。

「ピアーズ、今日はぜんぶひとりできめちゃって、ごめんね。」
「ぼくこそ、てつだわないで、ごめんね。」
仲なおりできたふたりを見てフレイジャーもにっこり。

そして、発表の日。
ふたりは仲よく、いっしょうけんめい準備をして、じょうずに発表をすることができたのでした。

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