シルバニア村はじめて物語

むかし、むかし。
緑の山をいくつもこえた、その奥の深い森のはずれにウサギさんの一家が住んでいました。 
ウサギさん一家は小さな畑をたがやしながら暮らしていたのですが、ある日のこと、お母さんがひどい風邪にかかってしまいました。



心配でたまらないウサギの男の子と女の子に、近くにすむリスさんが、
「森の向こうのシルバニアという所には、赤い実をつけたとてもいい薬草がはえているそうだよ。」
と、教えてくれたのですが、そこは、大きくてこわいものがすんでいる、といううわさがあって、けっして近づいてはいけない土地です。
でも、どうしてもお母さんによくなってほしいと思ったふたりは、つぎの朝はやく、お父さんにないしょでシルバニアに出かけていきました。



森をぬけると、そこは緑のゆたかなうつくしい場所でした。
やがて二人はがけの中ほどに赤い実の薬草を見つけたのですが、手をのばしてもとどきません。
そのとき、同じ年くらいの男の子と女の子が近づいてきて、
「いっしょにとってあげようか?」
と声をかけてくれました。
「うん、おねがい。」
4人はささえあって手をのばし、やっと一たばの薬草を手に入れることができたのです。



 二人の子どもはちかくに住んでいるクマの男の子と女の子でした。
「ありがとう。」「よかったね。」
 四人でいろいろなおしゃべりしてをして、すっかりなかよしになったころ、
「おーい、子どもたち。」
 大きな声がして、木立ちのむこうから、みあげるほど大きな影があらわれました。



ウサギちゃんたちは思わず逃げようとしたのですが、クマくんとクマちゃんが、
「お父さん! 新しいお友だちができたよ。」
と、うれしそうにとびついていったのでびっくり。
そのうえ、クマのお父さんはとってもやさしいひとで、ウサギちゃんたちがシルバニアに来たわけを知ると、薬草と野菜をたくさんかごに入れて、二人を森のはずれまでおくってくれたのです。



家に帰ったふたりから、今日の話をきいたウサギのお父さんは、おどろいたものの、まだ心配がぬぐえません。。
クマさんにもらった薬草と野菜のおかげでお母さんの風邪がよくなると、ウサギさん一家はクマさんたちにお礼を言うために、みんなでシルバニアに出かけていくことにしました。
畑で働いていたクマさん一家に、
「はじめまして、クマさん。薬草とやさいをどうもありがとうございました。お礼に仕事を手伝わせてもらえませんか?」
と、思いきって声をかけると、
「こんにちは、ぜひおねがいします。」
クマさんは大かんげい。
そして、クマさんとウサギさんの一家は一緒に働くうちに、お互いをとても気に入って、いい仲間になれそうだと思うようになったのです。



一日のおわり、みんなで晩ご飯を食べながら、クマさんはこんな提案をしました。
「ウサギさん、これからもいっしょにはたらきませんか? 今日みたいに力をあわせれば、もっともっといい畑が作れるはずですよ。」
それをきいたウサギさんは、すぐに大さんせい。
森にすむリスさんやキツネさんたちもさそい、みんなが力をあわせて、シルバニアで畑づくりがはじまりました。



だれかがこまっているとき、
「仲間なんだから、たすけ合うのがあたりまえだよ。」
というのがクマさんの口ぐせです。
そして、そんなクマさんの言うとおり、みんなでたすけ合っていくうちに、全員がかけがえのない仲間になっていったのです。
子どもたちはと言えば、みんなで村中かけまわってあそび、最初の日から大のなかよしになっていました。



やがて、
「みんな近くに住みたいね。」
と、仲間たちがつぎつぎと森のむこうからとひっこしてくるようになりました。
そうすると、広い畑に、新しい家々、みんなのあつまる広場もできて、シルバニアはひとつの村になっていったのです。



全員がシルバニアに移り住んだ日、ウサギさんが、
「ここをシルバニア村と名づけて、クマさんに村長さんになってもらったらどうだろう?」
と、提案すると、仲間たちの拍手と歓声がひびきました。
これが、シルバニア村のはじまりの日。
春のはじめの三月二十日のことでした。
それからみんながなかよく力をあわせて、シルバニア村をどこよりもうつくしく、しあわせな村にしていったのです。

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