はじめてのお友だち

(ヒツジの赤ちゃん)

村の小さな丘に、ぽつんと1本の木がたっています。
「これ、なんのき?」
ある日、ヒツジの赤ちゃんのエマちゃんが、お母さんにたずねました。
「この木はね、リンゴの木よ。なぜかもう何年も実をつけていないの。」
エマちゃんは、ひっそりと立つリンゴの木をふしぎそうに見あげました。
エマちゃんには、リンゴの木の気持ちがわかるような気がしました。
じつは、エマちゃんははずかしがりやで、なかなかお友だちがつくれないでいるのです。
(リンゴさんのおともだちになりたいな。)
そうすれば、リンゴの木も元気になって、おいしい実をつけてくれることでしょう。

それから毎日、エマちゃんはリンゴの木のお世話をしました。
木の幹をやさしくなでたり、まわりの草をぬいてあげたり、根もとにころがっている石をどけてあげたり。
さみしくないよう、お花のたねもまきました。
こうしてリンゴの木はエマちゃんの最初のお友だちになったのです。

ところが、エマちゃんのお友だちになったのは、リンゴの木だけではありませんでした。
毎日がんばるエマちゃんを見て、ほかの赤ちゃんたちもあつまってきたのです。
「わたしたちにもお手伝いさせて!」
晴れの日が続くと、赤ちゃんたちは小さなコップで何回も水をはこびました。

寒い日にはリンゴの木がかぜをひかないようにあたたかい毛布をまいてあげました。
「だいじょうぶ? わたしたちがついているからね!」
赤ちゃんたちは木の下にくっついてリンゴの木を一生けんめいあたためました。
いつのまにかエマちゃんは、村じゅうの赤ちゃんとなかよしになっていました。
一生けんめいお世話をした赤ちゃんたちのやさしい気持ちが通じたのかもしれません。
やがてリンゴの木には小さなかわいい花がさき、いくつかの小さな実ができました。

エマちゃんがたねをまいたお花がきれいにさきそろったころ、リンゴの実もちょうど真っ赤に色づきました。
エマちゃんは、リンゴの木を見あげて、そっと話しかけました。
「おともだち、いっぱいできてよかったね。」
そのとき、エマちゃんの手の中に、ぽとり、とリンゴがひとつ落ちてきました。
「これからも、ずっといっしょにあそぼうね。」
リンゴの葉がうれしそうに風にゆれていました。

商品ページへ
HOME おはなし一覧